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看病 (鳥居清経)

看病する美人の図 鳥居清経筆   08052  36x102
e0259194_19371208.jpg

江戸中期の風俗画ですが、構図や状況が興味深く、十畳以上の広い部屋(敷居・鴨居が省略されてなければ)で、床に就いたあどけない顔の病人を、布団で包み、見事な屏風(六曲一双:12面?)を建てて隙間風を除けつつ、絵でも楽しませて励まし、薬湯の湯気で部屋の温度と湿度を保ち、近しい人が付き添って顔色を見ながら手を当てていますので、この時代としては出来うる限りに手を尽くした看病の様子と言えそうです。

枕を頭の横から当てているのは、結った髪を乱さない為の配慮なのでしょう。また、体を半ば起こした姿勢は、薬湯を飲む時の誤嚥を防ぐ為の配慮なのでしょう。
屏風や着物の柄に梅の花があるので、季節は春なのでしょうが、この病人は熱でも出しているのでしょう。
顔色からは、病状が深刻そうではないので、幾らか気楽に眺めることが出来ます。

これを描いた鳥居清経は、生没年不詳らしいのですが、初代の鳥居清満に師事して、宝暦-安永(1751-1781年)の頃に作画活動をしていたとも言われています(謎の多い鳥居派の事ですし、清満の事すらあまり定かではありませんが)。
鳥居清経は、一枚物の画の作例が極めて少ないらしいので、(厳密には、もう誰も立証出来ませんが)真筆であれば希少な資料と言うことになりそうです。
鈴木春信風の美人画を描いていたと言われていますので、その点では、この画もそれらしく見えます。
それと、人物の表情には、この絵師の人柄の優しさが感じられます。

こんなテーマの画ですので、果たして客からの依頼で描かれた物なのでしょうか・・・?鳥居派の作品となれば、この人物も役者(当時のアイドル?)と言う事なのでしょうか?
見ていると、次第に想像が膨らみます。









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by Ru_p | 2013-06-18 00:43 | アート・コレクション | Comments(0)

夏の風物詩 (鳥居清峰)

蚊遣り美人図  二代目 鳥居清満(=初代 鳥居清峰)
 肉筆浮世絵 (岡本楼 稲岡) 31.5x78 07032
e0259194_1215431.jpg


蚊遣り(かやり)部分
e0259194_12153448.jpg


蚊の出る時季にはお馴染みのブタ型の蚊遣りですが、これが19世紀初頭(1810年頃)の江戸(浅草の新吉原)では既に使われていた、と言えそうです。

除虫菊を加工した『蚊取り線香』は、明治中期以降に『金鳥』の創始者に依って考案されたのだそうですので、まだこの頃には、松の葉などをこの中で焚いて、蚊が嫌う煙を出す為の器だった様です。

蚊遣りブタのルーツに関してweb上で検索してみますと、「推定年代 19世紀前葉~中葉」として発掘された蚊遣りブタが見付かりましたが、その形は、口が小さくて、全体に大振りで、「徳利を加工した様な形」でした。ところが、上の肉筆浮世絵を見ると、口が大きくて、現代の「蚊遣りブタ」にかなり近い形です。その時代の江戸新吉原の遊郭では、既にこの形が使われていたことが判ります。(果たして、この画は「蚊遣りブタ」の歴史資料として、最も古い物となるのでしょうか?)

今日使われている渦巻き状蚊取り線香(※)の様に、長時間の安定した燃焼を期待出来なかったでしょうから、寝る前には、蚊が忌避する煙を、この様に体や衣類に焚き込んでおく必要があったのでしょう。
「蚊取り」でなく「蚊遣り」と言われていたのも、まだ、除虫菊の無かった時代の煙では殺虫効果が弱かったからかも知れません。

豚の体を連想する形になっていたのは、寝具に火が移ることを避ける為の機能性と、陶器職人の遊び心とがもたらした必然の結果だったのではないかと推測されますが、真実はどうだったのでしょうか。

上の画の落款にある「鳥居清峯」ですが、画風などから初代鳥居清峰〈1787~1869年 :二代目鳥居清満が後に改名)と思われます。
参考: ボストン美術館のwebページ中に、酷似の画像を見付けました。そちらは木版画なのですが、図中に「青楼四季之詠 岡本屋内 稲岡」とあり、1810年の制作とのことです。人物や衣服の線や構図には共通する部分が多く、上の肉筆画と同一の絵師が同一の時期に(同一のモデルを)描いたと判断出来る作品です。
画の遊女部分の大きさは上の肉筆画の方が二倍程度と大きいのですが、背景のモチーフ(蚊帳など)での季節は設定も同じ夏です。



湯上がりの透ける単衣の着物に団扇とはお洒落ですし、7頭身以上の長身は、当時の標準的体型の女性よりも当然誇張された美女なのでしょう。

いったいどんな経緯でこの画が描かれたのでしょうか? 夢ででも、当時にタイムスリップしてみたい
          

 



                                                                                                                                                                                                           ※蚊取線香は、まだまだ使われてはいますが、マット式~ノーマット式~プッシュ式(それぞれに含まれる「ピレスロイド系」の有効成分を空気中に蒸散させるタイプ)へと進化したため、次第に消えてしまう運命なのかも知れません。 
あれに郷愁を感じる世代としては、少し寂しい気持ちも・・・・                                                               



                                                                                              
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by Ru_p | 2013-06-17 00:10 | アート・コレクション | Comments(0)

着飾る役者(江戸風俗)

 鳥居清信(二世?)筆 「陰間男色図」 11006
e0259194_17222138.jpg江戸時代には娯楽の代表が芝居でしたので、役者は大変な人気者だったそうです。
ただ、全ての役者という訳ではないので、生計を立てるために副業をする者も多かったようです。
若い男優の多くは今で言うホストのアルバイトをしていたらしいのですが、お客は封建社会制度の厳しい規制や戒律のために金は有っても自由が無く、鬱屈した生活を余儀なくされていた坊さんが多かったそうです。
ただし、そちらで人気が有ったのは十代の若者までで、二十歳を過ぎると、急に人気が下がったそうです。

e0259194_17473792.jpg
この画がどの様な状況でどの様な人物を描いたものなのか、資料不足で厳密に検証する事は出来ませんが、名のある絵師に注文して描かせた一枚物の肉筆画らしく、とても高価だった岩彩が多用されています。



e0259194_22361871.jpg落款(署名は無ありません)の下の印章は、「清信」と読めます。
しかし、初期鳥居派の絵師達に関しては、素性の情報が乏しく、諸説の交錯もあるので、清信(初代・二世に限らず)に関しては謎だらけです。

初代鳥居清信を開祖とする鳥居派は、初代清信の父親(鳥居派元祖の清元:大阪では女形役者、後1687年江戸に移る)の代から芝居の業界との繋がりが特に強く、役者絵や看板画の分野では現在に至るまでの約300年間、他派の参入を許さなかったと云われる名門の絵師集団でしたので、一派に不都合となり得た情報が、伏せられてしまっていたとも考えられます。



この画が二世鳥居清信(1702~1752)の作だとすると、当然同じ派の後輩等にも技法や構成の踏襲・継承があったと想像されます。
例えば、二世鳥居清信の死後に、八頭身を超える長身の美人画で名を馳せた鳥居派四代目の鳥居清長(1752~1815)の美形人物画の作風にもよく似ています。
この画は男性を描いたものですが、女性的雰囲気ですので、後の鳥居清長の超長身の美人画スタイルに、影響を及ぼした可能性が十分に考えられます。








【参考1】
(二代)鳥居清信 画(版画)瀬川菊治郎 (女形)
1744年(二代清信42歳の時)
(東京国立博物館蔵より部分)
e0259194_15352368.jpg顔の雰囲気は、上の画とも似て・・


















【参考2】
(初代)鳥居清信 画(版画)滝井半之助
(別冊太陽「浮世絵師列伝」より シカゴ美術館蔵)
e0259194_12343018.jpg姿勢や眼球の位置まで似て・・






















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by Ru_p | 2012-03-18 17:30 | アート・コレクション | Comments(0)


妄想猫の起末具連記


by Ru_p

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