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招かれた鬼?(芦雪)

長沢芦雪筆 風神図 紙本彩色 60*129 22005_R62
招かれた鬼?(芦雪)_e0259194_08433271.jpg


「鬼」の画?

いいえ(おそらくは)
一対の「鬼神」として描かれる事の多い「風神・雷神」の片割れの「風神」が、天空ではない何処かに座り込み、膨れた袋(風囊)の口紐を、嬉しそうに掴み上げている様子でしょう。
(風神は、風と雨を司る存在として古くからの信仰対象です)


職業絵師の芦雪(長沢芦雪:1754~1799)ならば、かつて京都に住んでいて、「琳派」で有名な俵屋宗達や尾形光琳が描いた、「風神雷神図屏風」の存在も、当然知ってはいた事でしょうが、(自意識の強かったであろう)芦雪であれば、彼らと同じ画題を、似た様に描いて比較される事など、好むはずもなかったろうと思われます。

そして、こちらの風神様の画ですが、威厳もなく、むしろ親近感のある姿に描かれていますので、その辺りが芦雪らしい主張(模写ではない表現)だったのではないかと思われます。


この風神様、力士の様に屈強そうな体格ではありますが、表情には愛嬌が溢れ、どことなく漫画的(角は猫耳の様に可愛らしく垂れ、大きな鼻の穴は上を向き、何とも純朴)です。
もう片割れに雷神様が居られたとすれば、恐らく同様に、お茶目でアニメチックな姿に描かれていたのではないかと想像してしまいます。
(風神様の視線の先の方にでも???)


しかしながら、下絵も使わず、滲みを抑える為の乾燥待ちも殆どせず、少ない色数で短時間に描いている様なので、「席画(宴席等での即興的な描画)」ではなかったのか(?)と考えられます。

一説に、芦雪は大変な酒好きだったそうで、酔っ払って興が乗ったからなのか、風神様が、まるで目の前で飲み仲間に加わったかの様に描かれています。
(脚は見下ろしで、顔は見上げとなる、至近距離の視点で)
場合によっては、サービス精神が旺盛で、悪戯好きの芦雪が、親しい呑み仲間の誰かを、風神様に見立て、茶化した似顔絵として、宴を盛り上げる為に、この様な姿に描いて見せたのかも知れません。


何百年も後世になって、今この画を見ていても、時空を越えて同じ酒宴に参加した気分を共有しているかの様で、何だか嬉しく思えて来ます。


招かれた風神様(?)、、、、まずは一献!






・・・・・・・・
芦雪の画
「茶掛け」ぢゃなくて
「酒掛け」かな
・・・・・・・・・・











ユルカワユイ
# by Ru_p | 2022-05-10 09:50 | アート・コレクション | Comments(0)

犬の気持ち (芦雪)

長沢芦雪筆 桜下遊狗図(部分) 絹本彩色 26*97 22002_R61
犬の気持ち (芦雪)_e0259194_13522460.jpg


「花より団子」かと思っていそうな犬たちでも、桜の花が気になる?
 (動物好きの芦雪には、そう見えたのでしょう)  
もし本当にそう感じていたならば、驚きですが、嬉しくもあります。
 (どことなく賢い子犬に見えて来そうです)  




世の中にたえて桜のなかりせばの心はのどけからまし
 と言う古今集の有名な在原業平の句での、
」を「」に置き換えて読みたくなりそうな様子です。
(犬の本当の心は、当の犬にしか判らないでしょうが)


芦雪の時代には、花見の対象は山桜だったそうですので、
この画の様に、葉が早く出ているのが普通だった様です。

三分咲き位ですが、染井吉野に比べると開花は遅いので、
新暦ならば4月中頃で、暖かい日和たった事でしょう。




・    














※18世紀末の平均気温が現代より1.2°低いと想定すると、
「開花600度法則」で現代京都の開花標準日からの起算で、
 当時の山桜の開花日を予想し、更に、三分咲きの時期を
 推測すると、「4月中頃」になりそうなので。















# by Ru_p | 2022-03-18 11:52 | アート・コレクション | Comments(0)

卓文君? 未完成?

唐美人図 無落款 紙本 墨画淡彩 47*125 07012
卓文君? 未完成?_e0259194_16122633.jpg
「唐美人」とは言っても、必ずしも「唐時代(618-907)」の婦人の画という意味ではなく、昔(江戸時代)は、中国の事が「唐(トウ、カラ)」と呼ばれていたので、中国の婦人の画は、(ほぼ全てが)その様に呼ばれていた様です。


この画は、描き込みが精細で、瓜実顔のモデルさんは端正で優美、正に「美人」と呼ぶに相応しい容姿なのですが、悩ましい事に無落款なので、私にとっては、気にはなりつつも謎の残る画でした。

この画と殆ど同じ構図で、円山派の絵師が描いた画は見た事が有りましたので、元々の画が、円山応挙(1733-1795)の作品で、この画は、その模写の一つなのだろうとの想像はしていました。


そして最近、ネット上に、その元画と思われる画像が見付かり、
卓文君? 未完成?_e0259194_17382270.jpg
《似鳥美術館(小樽芸術村)収蔵品のページより》

前漢時代(紀元前206 - 紀元後8)に実在した「卓文君(たくぶんくん)」と言う名の女性を、円山応挙が天明7年(1787;応挙が54歳の頃)に描いた画の様です。


卓文君は、大富豪の娘として育ちましたが、駆け落ちの末に生活が困窮した為、一時酒場を始めることとなりました。
この画には、その酒場での、酒器を洗う姿が描かれている様です。

卓文君の人柄は、「放誕にして風流」な才女と評されていた様ですので、そんな酒場なら、さぞや繁盛はしていた事でしょう。
(大富豪の父親が、見かねて支援をする事になるまででしたが)



改めて、上の無落款の画を見直すと、細部のディティールでの解釈が深められ、妥協無く巧みで丁寧な描線なのに、彩色の表現が控えめです。

主役の性格面に、内に秘める意志の強さは感じられますが、「放誕」として客をもてなせる愛想の良さが、感じられません。

恐らく絵師は、「卓文君」の姿を描くことよりも、応挙の構図を借りながらも、絵師自身の内に秘めた『理想像』を、更にストイックに追求し続けてみたかったのではないか、と想像してしまいます。
(妥協しなかった故の未完成?それ故の無落款?)

もし他に、満足して落款を記すべき画が描けていたのであれば、こちらの画は、破棄されても不思議ではなかったでしょうし、代価の為に残されたのであれば、この画にも落款は入っていたはずでしょう。
(自分自身の為に、手元に留めておきたかった、大切な想いの画?)



画の劣化具合や、モデルの表情から見て、江戸より後の時代の雰囲気も感じられますが、はたして真実は、どんな絵師が、どんな想いで描いた画なのでしょう?
(天才的な絵師には、夭逝も多かったので)


時代を越えた、そんな妄想をしながら眺めるのも、楽しくて、、


















# by Ru_p | 2021-11-20 21:52 | アート・コレクション | Comments(0)

不敵な眼光 (芦雪)

長沢蘆雪筆 軍鶏(シャモ)図 紙本墨画淡彩色 50*110 21016_R60
不敵な眼光 (芦雪)_e0259194_10184027.jpg
雄シャモ(軍鶏)ファイティングポーズの様です。



江戸時代以前に、タイ王国(「シャム」と呼ばれていた国で「シャモ」の語源)から輸入された、正に南蛮渡来の「鶏」だったそうです。
その後も、賭博を目的とした「闘鶏(競技)」の為に、人為的な交配に依る改良が繰り返されて来たそうですが、日本では「天然記念物」に、更に日本農林規格では、なぜか「在来種」にまでも指定されています。
(明治維新の時点での『在来種』と云う解釈でしょうか)


闘争心が非常に強い為、雄のシャモ同士を同じ檻に入れると、死ぬまで闘い続けてしまう、まさに「不屈の闘魂」を持って生まれて来た、孤高の「サムライ」的ツワモノです。

最大の武器が鋭い足の爪で、急所が頭なので、引き締まった体と長い足や首に依る、精悍な「筋肉美」の体型は、高い身の丈を保つ為の必然だったのでしょう。
(体高80cm以上の個体もいて;この画でも90cm近くに描かれています)




『ツッパリ』の前髪風なトサカ(胡桃冠)が、妙にアニメチック(擬人的)。「舐めんなよ!」とでも言い出しそうで、



不敵な「目」って ス・テ・キ
不敵な眼光 (芦雪)_e0259194_15272249.jpg
こんな「目」に、親近感を持っていたのだとしたら、、 






師匠の応挙(円山応挙;1733-1795)が、農家の次男としての「生まれ」だったのに対して、芦雪(長沢蘆雪;1754-1799)は、下級ではあっても武士の子としての「生まれ」であったので、異色の弟子だった様です。

そんな事が影響してか、芦雪の画には、しばしば「武士」の気風にも通じる何かが感じられます。(師とは大きく異なる画風)

筆運びでの「大胆さ」「勢い」「潔さ」、さらに、画題解釈などでの「奔放さ」「心優しさ」にも、ある意味では・・・ 。



そして、このシャモ君の「不敵」で、相手を見下す様な「目」にも、芦雪の人格が影響していたのだとしたら、

穏やかな師匠が亡くなった後でも、傲慢な「異分子」的存在のままだったなら、同門(ライバル?)だけに留まらず、世間でも、さぞや多くの『敵』を作ってしまっていた事でしょう。

(その内殺される事になっても・・・?)








その芦雪が、他にも「シャモ」を描いていて、



   【参考】 
「The Price Collection JAKUCHU and
The Age of Imagination」の図集より
不敵な眼光 (芦雪)_e0259194_23143236.jpg
長沢蘆雪筆 軍鶏図 紙本墨画淡彩 58*134

(同上の顔部分)
不敵な眼光 (芦雪)_e0259194_15241354.jpg

そこでも、やはり「目」は・・・・ ★












  
落款署名の書体までもシャモの雰囲気とは、凝った拘りを




# by Ru_p | 2021-09-26 13:38 | アート・コレクション | Comments(0)

子供好き (芦雪)

長沢芦雪筆 百唐子図(ひゃくからこず/署名は「蘆雪寫」)
      絹本彩色 56*134 21013_R59
子供好き (芦雪)_e0259194_15270063.jpg


ちょっと生意気そうな子供(大人になる少し前の)が大勢描かれています。

それぞれの顔や髪型(頭の上部や左右にだけ、髪を僅かに剃り残す、中国風で、江戸時代の日本では流行)の多彩で個性的な表情での描き分けが見事です。
(赤い服が男子で、白い服が女子風にも見えそうですが?)

現実の光景をそのまま写したと言うよりも、子宝に恵まれ、健やかに成長して、子孫が繁栄すると言う願いの込められた、縁起物としての象徴的な画にしたかったのではないかと思われます。

場合によっては、婚礼などでの祝いの品(服装が、紅と白ですし、幕の「波頭飛鶴」も、めでたい「鶴」が主役なので)としての注文で、描いたのではないかと考えられます。


日本の江戸時代には、中国の文物が大変もてはやされた「中国ブーム」があり、「百〇図」も、そんな中国から伝えられて来た、伝統的な構図形式の一つです。

そこでの「百」は、「数字」の百と言うよりも、「沢山の」と言う意味に使われていた様で、必ずしも「×100」の物が描かれるとは限らず、この画でも実際に描かれているのは、六十人程です。
例えば「百馬図」「百老図」「百子図」などは、中国渡来の『古墨』の図柄などにも使われていましたので、芦雪は、それらも目にしていた事でしょう。

ですから、この画は「百子図」とも言えるのでしょうが、子供達が中国風ですので、その頃の中国を表す言葉の「唐(から)」(必ずしも、唐時代と言う意味だけでは無く)を付けて、日本では敢えて「百唐子図」(又は「唐子遊図」)とも呼ばれていた様です。



上の画で、多くの子の視線が、画面左側の外の方に注がれていますので、何等かの公演を、舞台近くで鑑賞している状況と考えられます。
ただ、そうでない何人かもいて、好き勝手な方を向いて、無邪気に遊んでいますし、床には木戸札(入場券)も散乱していますので、皆が思い思いに楽しく過ごしている様子に見えます。
(絵師自身も楽しんで描いている様な)

動物や子供が好きだったと思われる長沢芦雪(1754-1799)ですが、彼自信は三十代の終わり頃、幼い我が子を相次いで亡くしています。
(この画には、そんな彼の願望や羨望も込められていそうです)

落款署名の書体の特徴などからは、芦雪の、そんな四十歳前後の画ではないかと推測できそうです。


下の方で、一際大きく目立つ様に描かれている子の顔は、芦雪の養子の長沢蘆洲(1767-1847)の息子に当たる長沢芦鳳(1804-1871)が、後に芦雪を描いたとされる肖像画(千葉市美術館蔵)とも、雰囲気が似ていますので、芦雪が、子供の頃の自分自身の面影を、無意識の内にも投影していたかも知れません。
(描かれた人物は、描いた人物に似る事が多い、とも言われますので)




舞台の様子も少し気になるので、
注文主が芝居関係者の可能性も、
ありそうな・・・?












# by Ru_p | 2021-08-26 15:38 | アート・コレクション | Comments(0)


妄想猫の気まぐれ記(ジユウビョウドウ)


by Ru_p

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