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江戸でもコスプレ?(鈴木芙蓉)

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鈴木芙蓉 筆 (見立て?)唐美人図 絹本肉筆 32.5×96 18023

鈴木芙蓉(すずき ふよう;1752-1816年)は、江戸時代中~後期の日本の文人画家で、江戸南画様式の確立に影響を与えた人物だったそうです。
信濃国(現在の長野県飯田市伊賀良)に生まれ、若くして江戸で画や儒学を学び、当時の著名な文人達との深い交流を通して互いに高め合い、後に徳島藩の御用絵師となった人だそうです。
(有名な谷文晁の『師』とも『弟子』とも言われる関係だったそうですし、当時の文人情報ネットワークの要人と言われる木村蒹葭堂とも交友関係があったそうです)

自身は、『絵師』よりも『儒者』(儒学者;得意分野を活かして)としての召し抱えを望んでいたらしく、画は職業としてではなく、『文人』の余技(達観した趣味人として;本来の『芸術家』的な表現者のあり方を求めたのか?)と言う立場で、もっと自由に、好き勝手に描き続けたかったのかとも思われます。
(その時代の「儒者」への求人は、残念ながら減る傾向にあったそうなのに、そんな生き方がカッコ良く思えたのでしょうか?)

芙蓉さんは、『儒者』を目指したこともあり、中国文化への憧れが強かったらしく、他の画のテーマでもその傾向を好んでいたそうです。

この画のテーマは「唐美人」(「唐」は、必ずしも「唐時代」という意味ではなく、「中国の」という意味として)なのでしょうから、中国から渡って来た画を参考にしていたのでしょうが、その緑色の唇は、文化・文政以降に日本中で大流行したと言われる「笹色紅」(紅花の抽出物の液が、乾燥後に緑色に見える状態となる性質を利用した高価な「口紅」)を表現したものと思われます。
しかしその頃までの中国では、必ずしもその色の口紅の文化は起こっていなかった様です。

この女性の顔も、中国絵画で良く見らる小顔で控え目な表情とは異なり、何か強い主張を感じさせていることから、おそらくは、芙蓉さんの身近な特定のモデルさんを、画の中で(遊び心で)コスプレさせ見立てで、『唐美人』風に描いて見せたのではないか(?)と思えてしまいます。

当時流行の美人ではないまでも、何となく優しさを感じさせる、魅力的な人柄が伝わって来る様で・・・


















by Ru_p | 2019-02-17 19:32 | アート・コレクション | Comments(0)

『虎図』のモデル? (芦雪)

長沢芦雪筆 見返り猫 絹本  37.5×90.5 18028
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(毛繕いする猫の、顔の拡大)



e0259194_08552672.jpgカメラ目線ならぬ絵師目線。
いかにも鼠を良く捕りそうで、気儘なオスの雰囲気。

丹念に毛繕いをしていますので、雲や湿気を感じて、天候の崩れを予感していたのでしょう。

ご近所で顔馴染み野良君だったのかも知れませんね。

街中で暮らしていても、野生の本能を強かに失わない、こんな猫達が、当時は虎図のモデルに見立てられていたのかも知れません。

この画には、型通りではなく、見たまま感じたままを描く、という写生の意思が感じられます。
ヒゲの曲がり具合や、瞳の形、毛皮の陰影まで、猫の生態が実に良く捕らえられていますし、対象と真摯に向き合い観察して来たそれまでの体験も、大きく参考となっていたのでしょう。




芦雪は似た毛並みの猫の画を何枚か残しているようなので、それらは近い時期(野良猫ならば寿命はおそらく数年なので)の作品なのかも知れません。
(「蘆雪」の落款の書体と印章を見ると、応挙の代理として南紀に赴いた天明7年;1787;34歳頃までの作品に似た物が多い様に感じます)

無量寺の襖絵の猫たちにも、近い雰囲気が感じられますが、この猫の寛いだ表情には、芦雪の心理状態も反映されていたのではないのでしょうか。









猫は、芦雪にとっても見飽きない・・・













by Ru_p | 2019-02-10 13:25 | アート・コレクション | Comments(0)

中年北斎の美人画?

e0259194_16071935.jpg
伝北斎画 新吉原見送り花魁図 紙本肉筆 式亭三馬賛 28×95 18030


画賛を書いた式亭三馬(しきていさんば;1776年-1822年2月27日)が、存命で、名が売れて、活躍しいた時期を考えると、この画の作画時期は、1810~1820年の前後と推測出来そうです。

それは、北斎が号を「北斎」から「戴斗」に改め始めた文化7年頃から、「為一」を使い始める文政3年頃までと、ほぼ重なりそうです。(北斎が中年の50代頃?)

画の方では、その頃の北斎の他の席画(出先での即席描画)風の美人画に、似た筆致の作品が多く見られます。

手早い筆裁きで、無駄な線の無い、見事な表現です。
e0259194_11093015.jpg



ただ、草書の落款署名は、「北」に続く間隔が少し不自然で、次の文字も判読しにくく、「戴・?」でしょうか?(不詳)

何だか、つい「北斎」と書こうとしてしまい、一旦躊躇い、改めて続きを書いたかの様にも感じられます。
e0259194_10204828.jpg
このほぼ7ミリ角が二つと小さい連印も、「北」の下の文字が難読です。(他の作品での使用例は見ません)


この花魁は若く美しく、それなりに可愛い姿ですが、私には何だか内心で「また来てお金を沢山使ってね!」と思いつつ、客に手を振っている様に見えてしまいます。
(現代でも似た情景がありそうでコワイ!でもチョット惹かれそう・・)





by Ru_p | 2019-02-08 11:36 | アート・コレクション | Comments(0)

雪岱の魔力

小村雪岱筆 美人立姿 絹本彩色肉筆画(軸装) 本紙55.9×43.3 18025
e0259194_21012454.jpg
 草むらから飛び去る小鳥。それを目で追い振り返る切れ長の目の女性。そんな一瞬を永遠に止めてしまった。

「小村 雪岱(こむら せったい:1887~1940年)」は、大正〜昭和初期に、日本画家、版画家、挿絵画家、装幀家、舞台装置デザイナーなどと多彩に活動したマルチアーティストでした。

特に、挿絵や版画の分野では「昭和の春信」(春信:江戸中期の人気浮世絵師の鈴木春信)とも称され、描かれる女性の表現が、華奢(きゃしゃ)でたおやか、清楚でほのかに色気を保つ事などで共通しているのですが、肉筆画作品が殆ど残っていないと言う点でも「鈴木春信」と共通しています。

雪岱という名前が一般的には読み難い事や、現存する作品数が極めて少ない事、活動した時代の社会的背景などもあって、一部に熱狂的な信奉者(ファン)がいるにも拘わらず、そんな彼の知名度は決して高いとは言えません。


ところで、上段の「美人立姿」の肉筆画には、とてもよく似た(背景もサイズも)の作品が埼玉県立近代美術館にも収蔵されえいます。

花や草の一つ一つは、それらと同様の筆致で描かれていますが、顔の表情は明らかに異なっています。
より細部を見比べてみると、上の作品では特に、目や眉、地面など背景の僅かな彩色、落款印章の種類や位置などですが、明らかに(意図的に)変えられている様に見えます。

双方とも、個人的注文で私的に描かれたのでしょうが、その違いは、単に作者の拘りによる微細な修正だった様に思われます。
ただ、顔が別人の様なので、雪岱さんは、それぞれ誰をモデルに想定して・・?



【参考①】
小村雪岱筆 美人立姿 絹本彩色肉筆画(軸装) 本紙56.5×43.2
 (埼玉県立近代美術館収蔵)
e0259194_20051676.jpg
(どちらも素敵な作品に見えますが、その違いは何に拘って?)


【参考②】
小村雪岱画 見立寒山拾得 復刻木版画(没後) 18005 42.8×28.9
e0259194_20030819.jpg

この版画の元絵の女性は、下谷の福子と赤坂山王下「宇佐見」の琴、という芸妓さん達がモデルだそうで、親交のあった作家の泉鏡花を囲む親睦会「九九九会」での馴染みだったと言われています。

雪岱さんは、
「私は挿絵を描きますのに、未だモデルを使ったことはありません」
とか、
「描きたいと思う女は、自分の内部にある記憶であって、私の心象です」
と言っていて、その「心象」とは、幼い頃に別れた母親だったり、仏像や浮世絵に由来していたそうです。
(「写実」を離れた心象画ということらしい)

②の版画の様な実在モデルでの作画は、晩年の希な試みだったのかも知れません。




雪岱さんの作品には、見る者を時間や空間を超えた、独特の雰囲気を持つ幻想の『異世界』に引きずり込む『魔力』が潜んでいると言われています。

それには同感で、時々引き込まれたくなる、ドラマチックな非日常を感じる、大好きな異世界です。











by Ru_p | 2019-02-03 00:34 | アート・コレクション | Comments(0)

春信風? でも・・

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作者不明(印不詳)納涼美人図 絹本肉筆浮世絵  26.3×26.3 18021

落款印は、「文円堂」「堂文」とは読めそうですが、誰の事なのかは不明です。
髪型などの特徴は、江戸中期の人気絵師、鈴木春信の描いた美人画(主に版画での)を思わせる雰囲気がありますので、それに近い時代で、春信の何らかの影響が及んだ絵師の作かと思われます。
しかし、この時代の浮世絵師たちの肉筆画を比較出来る信頼出来る残存資料等が極めて少ないので、作者が誰かという想定は、しばらく難しそうです。


ただ単に、江戸中期の美人画としてだけで見れば、それなりの面白さがあります。
例えば、描かれた様々な要素から、その場の状況を考察してみるのも楽しそう。

①青竹の縁台(シンプルそうなデザイン;その構造や納まりに不自然さ?)
②黒漆塗り笹の葉柄の煙草盆(この女性が寛ぐ為?キセルが見えないが?)
③春信風の髪型や櫛飾り(簪が無いので、花魁ならオフタイム休憩?)
④桐(五・三)の紋の団扇(遊郭の紋?だとすれば何処?年代は?)
⑤竹垣の朝顔(時季は新暦なら7~11月?)
⑥着物の着方(秋物柄の羽織ですが、真夏だと暑そう)
⑦使われている絵の具(鮮やかで高級な岩絵の具が使われている/描いたのは、当時高名な絵師?)
⑧白い部分の胡粉(ごふん;貝殻を粉にして膠と練った絵の具)の剥落が多そう(古い画の宿命)なので、その上に塗られた墨や顔料も、既に一部は失われているの可能性あり。


表情にあどけなさを感じますが、小顔でスリムな8頭身以上と思われる体型なので、幼児体型を思わせる多くの春信木版画とは、幾分異なる雰囲気が感じられますね。








by Ru_p | 2019-02-02 11:53 | アート・コレクション | Comments(0)


妄想猫の起末具連記


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