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カタツムリの「書」? (芦雪)

長沢芦雪 筆 蝸牛(カタツムリ)図 紙本彩色肉筆 27.6×122 19011
e0259194_18255222.jpg
カタツムリが二匹描かれている、という事に違いはないのですが、
画としての主役となると、カタツムリの本体よりも、むしろ・・・・。



落款は、印象だけでなく、署名もされているのですが、不明瞭なので、見過ごされそうです。

【上の画の落款署名を拡大した画像】
(但し右画像は、筆跡比較のため色調調整してみたものです)
e0259194_23065262.jpg

この署名の文字(上の左側の拡大画像)の色が暗くて不明瞭(背景の地色に近く見える)なのは、使われた絵の具に、変色し易い成分が含まれていて、(意図的または保存環境の影響かで後に)黒っぽく変色してしまった可能性も考えられます。

例えば江戸中期に尾形光琳(1658-1716)が描いた、国宝の「紅白梅図屏風」の川の部分の黒っぽさは、意図的に硫黄を使い、銀箔部分を黒く変色させていたと考えられている様ですので、研究熱心だった芦雪ならば、そんな大先輩の手法を知っていて作画効果の為に利用した可能性も考えられそうです。

また、この「平安蘆雪」と言う楷書体の署名は、芦雪が20代後期(天明年間の初期)で、まだ駆け出しだった頃の作品に見られるものと、似ている様です。


ところで、上の画と酷似の作品が、クリーブランド美術館の収蔵品の中にもあり、ネットで公開されてます。
(下に参考画像)


【参考】長沢芦雪 筆 蝸牛図 紙本彩色肉筆 40.6×114.3
(Cleveland Museum蔵)
e0259194_08562781.jpg
この(クリーブランド美術館の)画では、落款署名の金色の文字には、全く変色した様子が見られません。


作品の寸法や縦横比率が異なりますし、署名に使った絵の具(金泥など)の調合が幾らか異なる様ですが、書体や背景地色などの要素では、双方共によく似た雰囲気が感じられます。
それに、二つの画でのカタツムリ部分は、形や塗り分け方が極めてよく似ていますので、その部分に関してだけは、同じ下絵(二種類一組の同じ型紙を使い分けて)で描かれたものの様です。
おそらく、これら二つの画は、極めて近い時期(天明前期?)に制作されたものと考えられます。

芦雪は他の作品を見ても、自身の署名には、それなりの拘りを持って使い分けていた様ですので、場合によっては、文字が目立ち過ぎて浮く事を懸念して、目立たぬ様に(「隠し落款」風に?)バランスの調整を試みたという可能性が考えられます。

ちなみに、カタツムリの通った軌跡の部分には、(おそらくどちらの画にも)絵の具として、ニカワに解いた白雲母(?)の粉がラメの様に使われていて、暗い背景の地色とも相まって、カタツムリが分泌した粘着物に似せて見せる表現を試みたものと思われます。

【軌跡部分の拡大画像】
e0259194_18263330.jpg


芦雪は双方の画で、軌跡のうねり具合の趣に拘っていた様で、意図的に雰囲気を変えてみたものと思われます。
(あたかも、前衛的な「書」を試みたかの様に)



芦雪の描いた、他の似た作例、と言う意味では、ナメクジの図でも軌跡(足跡?)の試みが見られます。

そのナメクジ図の方は、草書体の署名の特徴から、寛政年間後期に制作されたものと思われます。
芦雪の最晩年に近い時期と言う事もあり、手慣れていた為にか、型紙(下絵)は使わず、淡墨と淡彩だけで、一気に描いた様です。
白地の紙にですが、ナメクジの単純な形と薄い墨色の軌跡で、「書」の雰囲気は強調されています。

【日本の『前衛書』の先駆者!】
これらの画(前衛的な「書」)には、当時奇抜だったと思われる画題や画法に挑戦した、芦雪の「遊び心」の「軌跡」が伺えて、とても面白い作品群だと思います。















※昔(温暖化が進む前)の日本には少なかったのでしょうが、ナメクジやカタツムリの体内および分泌する粘液には、近年海外から入って来る様になった「広東住血線虫(主にネズミが媒介)」や「ロイコクロリディウム」などの寄生虫が、潜んでいる事もあるそうです。

それらの寄生虫が、人の口から体内に入ってしまった場合、脳や脊髄にまで達すると、死亡する例も少なくないそうですので、触れた手や、分泌粘液の付着した生の野菜などは、よく洗わずに口にする事のない様に注意しましょう。
当然、カタツムリやナメクジ以外の生き物であっても、食物連鎖と言う観点で見れば、人が生のまま口にすれば、感染する可能性があると考えられます

今後は子供たちも含めて、野外で活動したら、必ず手を洗うと言う習慣の徹底が、強く求められそうです。



カタツムリに罪は無いのに・・・


by Ru_p | 2019-05-04 20:19 | アート・コレクション | Comments(0)


妄想猫の起末具連記


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