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白隠の禅画(の4)

白隠慧鶴筆 蓮池観音座像図 自画讃 18008 29×98

白隠の禅画(の4)_e0259194_19540891.jpg
白隠さんが度々描いていた定番的な画題で、観音菩薩の図とその画賛の様です。

上部の賛は、「観音経」(「法華経」の中の「観世音菩薩普門品第二十五」)から引用した、「慈眼視衆生 福海無量」という文言の中の、一文字「(ジュ:「あつめる」意味)」を、「(ジュ:「祝い」の意味)」の文字に置き換えて、一際大きく書き、「(観音菩薩が)海の様に大きな慈悲の心で衆生を見て祝福する」と言う様な意味にアレンジして、画を目出度そうな雰囲気にも見せている様です。

内側に蓮華柄の衣を着て、蓮華の花の宝冠を被り、外側には頭から白い布をまとった、ふくよかで穏やかそうな表情の女性が、両手で印(禅定印)を結び、目を閉じて蓮池に面した岩の上の蓮華座に座り瞑想しています。
その左側には、瓶に挿された柳の小枝が蓮の実の上に載っています。

宗教的絵画で、一般に尊像が描かれる場合には、象徴的に結びつけられたアイテム(持ち物、小道具・背景、又は手足等の特定のポーズ等)が、その尊像の性格を示す約束事として描かれる事が多く見られます。
そのアイテム類は、「持物(じぶつ)」又は「アトリビュート(attribute)」とも呼ばれ、古い経典などの中に、その根拠が示されている場合も有ります。

そんな理由があるので、この女性は、「楊柳観音」とか「白衣観音」と解釈されて呼ばれる場合もしばしばあります。

しかしながら、逆の意味では、どれか一つの尊名には、特定しにくい画とも言えそうです。

場合によっては、この女性を様々な観音の化身の様に見立てて描く事で
、多くの変化観音の、それぞれの優れた能力を集約的に、ご利益として期待させたかったのかも知れません。



観音経の「観世音菩薩普門品第二十五」は、104句(520文字)の(大乗仏教の)経典とされて伝わっています。

白隠さんは、それを上の様に、たった2句(10文字)の画賛に要約して使った訳ですが、それと似た要約版に、「延命十句観音経」(「延命」は白隠さんの命名)という42文字の便利な経典(原典では無く、「偽経」とされる)もあり、(生衆が)それを幾度も唱える事で、救済(の現世ご利益)が期待出来ると信じられていたそうです。

何れにしても、白隠さんご自身が、慈悲の心を持って、生衆の救済を望んでいたからこそ、この様な画や画賛を描き続けていた(それが、白隠さんの目指した「禅」の一つの形だった)と言う事なのでしょう。

おそらく当時は、今より多くの生衆の苦しみを目にする時代だったでしょうが、その生衆へは、白隠さんご自身と同様の「禅」の道を勧めるのではなく、観音様への祈願と言う形で救われる手段をすすめた。
(何だか、大昔のお釈迦様の苦悩にも似た、判断や選択の葛藤が感じられます)










by Ru_p | 2018-05-07 19:55 | アート・コレクション | Comments(0)


妄想猫の気まぐれ記(ジユウビョウドウ)


by Ru_p

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