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葛の葉狐と童子丸 (二代 豊国)

童子丸は陰陽師だった「安倍晴明」の幼名なのだそうです(伝説)。
歌川国重筆 06054
e0259194_62173.jpg

怪しげなおぼろ月夜の森の中で母を慕う幼な子ですが、母のコントラストや彩度を低く描く方法で、狐の妖かしが人に化けた姿であることを表現した肉筆浮世絵です(作画時期は不詳;1817-1834年頃)。


下記にウィキペディアの「葛の葉」からの抜粋を転記してみます。(緑色部分)
村上天皇の時代、河内国のひと石川悪右衛門は妻の病気をなおすため、兄の蘆屋道満の占いによって、和泉国和泉郡の信太の森(現在の大阪府和泉市)に行き、野狐の生き肝を得ようとする。摂津国東生郡の安倍野(現在の大阪府大阪市阿倍野区)に住んでいた安倍保名(伝説上の人物とされる)が信太の森を訪れた際、狩人に追われていた白狐を助けてやるが、その際にけがをしてしまう。そこに葛の葉という女性がやってきて、保名を介抱して家まで送りとどける。葛の葉が保名を見舞っているうち、いつしか二人は恋仲となり、結婚して童子丸という子供をもうける(保名の父郡司は悪右衛門と争って討たれたが、保名は悪右衛門を討った)。童子丸が5歳のとき、葛の葉の正体が保名に助けられた白狐であることが知れてしまう。次の一首を残して、葛の葉は信太の森へと帰ってゆく。
恋しくば尋ね来て見よ 和泉なる信太の森のうらみ葛の葉保名は書き置きから、恩返しのために葛の葉が人間世界に来たことを知り、童子丸とともに信太の森に行き、姿をあらわした葛の葉から水晶の玉と黄金の箱を受け取り、別れる。数年後、童子丸は晴明と改名し、天文道を修め、母親の遺宝の力で天皇の病気を治し、陰陽頭に任ぜられる。しかし、蘆屋道満に讒奏され、占いの力くらべをすることになり、結局これを負かして、道満に殺された父の保名を生き返らせ、朝廷に訴えたので、道満は首をはねられ、晴明は天文博士となった。

と言うのが伝説の概要です。
この伝説、近世(江戸時代)には人形浄瑠璃・歌舞伎 『蘆屋道満大内鑑』 (通称「葛の葉」)で取り上げられて広まった話だそうです。

〔豊国の襲名争い事件〕
この画は落款の『国重』から、「初代歌川豊国」の養子となり、翌文政8年(1825年)初代の没後「二代目歌川豊国」を襲名したのに、兄弟子「国貞(初代)」の圧力に屈し、また元の「国重」にもどした(一時「豊重」とも称した)人物「歌川国重(初代)」(1777?-1835年)が描いたのではないかと推測されます。
この二代目豊国は忠実に師の画風を受け継いで、堅実な作風の美人画や役者絵、芝居絵を描いたそうです。
また、文政11年(1828年)頃には本郷春木町に住んでいて、後には「二代目歌川豊国」を強引に称した国貞と区別するため「本郷豊国」と呼ばれていたそうです。



この襲名争いの末(国重の歿後;西暦1835年12月20日以降)、改めて「豊国(三代目)」を襲名できた「国貞(初代)」の方は、強引にフライングで「二代目豊国」を名乗ってしまったことから、
歌川を うたがわしくも 名のりいで 二世の豊国 偽の豊国
と恥ずかしいことに当時の川柳に詠まれてしまったそうです。
当時の江戸庶民が判官贔屓だったからかでしょうか。
(その「国貞(初代)」、史上最も多くの浮世絵作品を残した絵師なのですが、傑作と呼べる物はそれほど・・・?)


この襲名争い関連の話をネットで調べてみますと、名前の錯誤・混同による誤認が実に多いことには驚きます。
古いことですし、襲名や改名が頻繁に行なわれた業界だったのに記録があまり残されてないことが原因なのでしょうか(または、意図的に誤った情報が流布されたのか?)。ちなみに、上記の「国貞」「国重」等にもそれぞれに二代目や三代目以降が更に存在したのでですから、客にとっても紛らわしかったことでしょう。
もしも、それぞれの初代が存命であれば、ご当人もこんなドロドロの利権絡みの争いなどは嫌がることでしょうが、初代が立派過ぎると後が辛いのは何時の世も・・・


e0259194_10322522.jpg参考で国重の没後10年近く経った1845~1847年に掛けて歌川広重、国芳、国貞の歌川派一門合作により描かれ、出版された小倉擬百人一首版画の内の広重の『小倉擬百人一首 中納言兼輔 狐葛の葉 安部童子』という版画の画像を載せてみます。

なぜか上の国重の肉筆浮世絵と部分的な画像と構成がそっくり(真似:ほとんど下絵の人物配置を換えただけ)です。一点物の肉筆画が江戸時代最強のマスメディアだった版画出版物に『知的財産権』を乗っ取られ押しつぶされた証しにも見えますが、当時は、それが絵師たちの仕事だったので、誰も問題だとは思わなかったのでしょう。
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by Ru_p | 2012-08-13 21:41 | アート・コレクション | Comments(0)


妄想猫の起末具連記


by Ru_p

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