桂山の彫り駒
桂山作 淇洲書彫りの駒
王将と玉将に彫られた銘
これを彫った『桂山』(本名;水戸常丸;1922年生まれ;故人)は、山形県にいた将棋駒の彫り師です。
(この「皇太子殿下御前彫師」は、昭和天皇の時代の落款で、今でも多くの根強いファンがいる人気の高い彫り師のものです)
その昔(昭和の時代)、仕事の関係で山形県の天童付近に半年間近く滞在していた時、何気なく立ち寄った将棋駒専門店でこれを目にして、強く衝撃を受けました。
しかし、価格がとても高かったので(当時の手取り数ヶ月分位)、とても買えるとは思っていませんでした。
以後は、もっと手頃な額で、気に入る駒が見付からないのか? と考え、他の将棋駒専門店をも頻繁に見て回る様になっていましたが、この駒ほどの癒やしを感じる駒には出会いませんでした。気が付くと、頻繁にこの駒のある店を訪れる様になり、店主とも親しい仲になっていました。
(魅力的な『桂山』の駒を、個人的に高く評価し、目の保養のつもりで立ち寄っていました)
私がそれほど気に入ったことは、何時しか店主とも親交の厚かった当の桂山氏の耳にも届き、気をよくしたご当人から、ある時に様々な情報を聞く機会が出来ました。
この駒の材料となった重くて美しい木材(最後まで教えてくれませんでしたし、否定されたのですが、紫檀に似ています)は大変に珍しく、また、とても固かったので、極めて正確な彫りの技術と、とてつもない集中力が必要だったのだそうです。同じ材質の駒は、入手できた材料の制約から、この世に二組しか存在せず、今後はもう彫る事はない、とのことでした。
(そのもう一組で弟分の価格の駒は、残念ながら私が来る前の週、東京から来た人が大変に気に入り、買ってしまったのだとか)
桂山氏は、この材質の駒の為に、漆の耐久性試験で、自から煮たり揚げたりと様々な工夫を行ない、全く問題が無いことの納得を得ていたそうで、そんな話から、仕事に対しての強い責任感と熱い情熱を持った人柄が感じられました。
この淇洲彫りの駒は、仕上がりまでに大変な労力と情熱を掛けた品物だったので、彫り埋めでなく、更にランクの高い「盛り上げ」仕様(専門職への外注)にも、その気になれば出来たのだそうですが、敢えてしなかった様でした(私も、盛り上げという仕様は、彫りの良さが隠れてしまい、将棋を指す時にも、文字の漆の盛り上がった部分が盤面と摺れる様な不安を感じるので、個人的に好みではありません)。おそらく桂山氏は、彫り師として、拘って作った品の価値を理解してくれる人がいてくれて、嬉しかったことと思います。
私の山形滞在も終わりが迫った或る日、既にすっかり仲良くなっていた店主から「作者との相談で、(餞別代わりに)安く譲っても構わない」との話がありました。その結果『桂山』の精と魂がこもったこの駒を、驚く様な破格で入手する事が出来、山形の好い想い出となりました。
私は嬉しくなり、その半月後にも、一般的な(楽に彫れた?)桂山作の彫り駒(水無瀬)を、実際に将棋を指す為に、買足し希望しましたが、そちらは残念ながら、値引きに応じてもらえませんでした。
実は、私は将棋が弱いので、同レベルの相手に恵まれず、家では眺めるだけで、たったの数回しか使った事がありません。
これでは、持ち腐れと言われても・・・
※将棋の駒は普通、予備の歩が1枚あり、合計41枚なのですが、桂山の場合には、予備の歩が2枚有るので合計42枚となるのが特徴なのだそうです。
他の彫り師でも、ちょっと良い駒の場合には、そう言うことが有るらしいです。
王将と玉将に彫られた銘
これを彫った『桂山』(本名;水戸常丸;1922年生まれ;故人)は、山形県にいた将棋駒の彫り師です。
(この「皇太子殿下御前彫師」は、昭和天皇の時代の落款で、今でも多くの根強いファンがいる人気の高い彫り師のものです)
その昔(昭和の時代)、仕事の関係で山形県の天童付近に半年間近く滞在していた時、何気なく立ち寄った将棋駒専門店でこれを目にして、強く衝撃を受けました。
しかし、価格がとても高かったので(当時の手取り数ヶ月分位)、とても買えるとは思っていませんでした。
以後は、もっと手頃な額で、気に入る駒が見付からないのか? と考え、他の将棋駒専門店をも頻繁に見て回る様になっていましたが、この駒ほどの癒やしを感じる駒には出会いませんでした。気が付くと、頻繁にこの駒のある店を訪れる様になり、店主とも親しい仲になっていました。
(魅力的な『桂山』の駒を、個人的に高く評価し、目の保養のつもりで立ち寄っていました)
私がそれほど気に入ったことは、何時しか店主とも親交の厚かった当の桂山氏の耳にも届き、気をよくしたご当人から、ある時に様々な情報を聞く機会が出来ました。
この駒の材料となった重くて美しい木材(最後まで教えてくれませんでしたし、否定されたのですが、紫檀に似ています)は大変に珍しく、また、とても固かったので、極めて正確な彫りの技術と、とてつもない集中力が必要だったのだそうです。同じ材質の駒は、入手できた材料の制約から、この世に二組しか存在せず、今後はもう彫る事はない、とのことでした。
(そのもう一組で弟分の価格の駒は、残念ながら私が来る前の週、東京から来た人が大変に気に入り、買ってしまったのだとか)
桂山氏は、この材質の駒の為に、漆の耐久性試験で、自から煮たり揚げたりと様々な工夫を行ない、全く問題が無いことの納得を得ていたそうで、そんな話から、仕事に対しての強い責任感と熱い情熱を持った人柄が感じられました。
この淇洲彫りの駒は、仕上がりまでに大変な労力と情熱を掛けた品物だったので、彫り埋めでなく、更にランクの高い「盛り上げ」仕様(専門職への外注)にも、その気になれば出来たのだそうですが、敢えてしなかった様でした(私も、盛り上げという仕様は、彫りの良さが隠れてしまい、将棋を指す時にも、文字の漆の盛り上がった部分が盤面と摺れる様な不安を感じるので、個人的に好みではありません)。おそらく桂山氏は、彫り師として、拘って作った品の価値を理解してくれる人がいてくれて、嬉しかったことと思います。
私の山形滞在も終わりが迫った或る日、既にすっかり仲良くなっていた店主から「作者との相談で、(餞別代わりに)安く譲っても構わない」との話がありました。その結果『桂山』の精と魂がこもったこの駒を、驚く様な破格で入手する事が出来、山形の好い想い出となりました。
私は嬉しくなり、その半月後にも、一般的な(楽に彫れた?)桂山作の彫り駒(水無瀬)を、実際に将棋を指す為に、買足し希望しましたが、そちらは残念ながら、値引きに応じてもらえませんでした。
実は、私は将棋が弱いので、同レベルの相手に恵まれず、家では眺めるだけで、たったの数回しか使った事がありません。
これでは、持ち腐れと言われても・・・
※将棋の駒は普通、予備の歩が1枚あり、合計41枚なのですが、桂山の場合には、予備の歩が2枚有るので合計42枚となるのが特徴なのだそうです。
他の彫り師でも、ちょっと良い駒の場合には、そう言うことが有るらしいです。
by Ru_p
| 2014-07-03 08:48
| アート・コレクション
|
Comments(0)
妄想猫の気まぐれ記(ジユウビョウドウ)
by Ru_p
最新の記事
即ち、席画? (芦雪ならば) |
at 2023-12-12 12:46 |
雪でも楽しい (芦雪の子犬) |
at 2023-12-01 12:31 |
「半跏思惟」かな? (芦雪) |
at 2023-06-10 07:00 |
河豚(フグ)≒ 福(ふく) .. |
at 2023-06-02 19:07 |
MY ・・・ (芦雪) |
at 2023-04-21 11:42 |
アウトドアを楽しむ (芦雪) |
at 2023-04-19 11:16 |
迷路から戻れて、(都路 華香) |
at 2023-04-04 12:31 |
火星人襲来? (芦雪) |
at 2023-01-12 13:02 |
虎も、猫並み(その2) |
at 2022-07-15 19:05 |
龍に睨まれる (芦雪) |
at 2022-06-01 13:08 |
招かれた鬼?(芦雪) |
at 2022-05-10 09:50 |
犬の気持ち (芦雪) |
at 2022-03-18 11:52 |
卓文君? 未完成? |
at 2021-11-20 21:52 |
不敵な眼光 (芦雪) |
at 2021-09-26 13:38 |
子供好き (芦雪) |
at 2021-08-26 15:38 |
名は、かけた? (芦雪) |
at 2021-06-03 19:48 |
描描鹿鹿 (芦雪) |
at 2021-06-03 19:29 |
シャカリキでの修行? (芦雪) |
at 2021-06-03 19:03 |
アニメ風 (芦雪) |
at 2021-05-09 12:47 |
春の宴 (芦雪) |
at 2021-01-01 15:11 |
記事ランキング
タグ
長沢芦雪(長澤蘆雪)(60)美人画(28)
肉筆浮世絵(27)
禅画(16)
杭州寒蘭(15)
開花(14)
仏画(14)
写生画(14)
良寛(11)
和歌(10)
円山応挙(10)
漢詩(8)
月夜(8)
邱北蘭・紫秀蘭(8)
大田垣 (太田垣) 蓮月(7)
葛飾北斎(7)
虎(7)
妖怪(6)
ウチョウラン 羽蝶蘭(6)
仙厓義梵(6)
龍 龍虎図(6)
観音菩薩(6)
牛図(5)
桜新町(5)
サザエさん(5)
アニメ 漫画(5)
波平さん(5)
酒宴(5)
与謝蕪村(5)
桜 さくら(5)
自画賛(5)
木村蒹葭堂(5)
寧々(4)
落款(4)
カラス(4)
白隠慧鶴(4)
猫(4)
清貧(4)
襲名問題(3)
中国春蘭(3)
抽象絵画(3)
鳥居派(3)
古今集(3)
俳画(3)
梅(3)
紅葉(3)
鬼(3)
猿(3)
縁起物・吉祥(3)
不動明王(3)
富士山(3)
正月(3)
サツマチドリ 薩摩千鳥(3)
仔犬(3)
挿絵・装幀画家(3)
七福神(3)
谷文晁(3)
化け狐(妖狐)(2)
弁財天(2)
山水画(2)
寛政の改革(2)
文房四宝(2)
鶏(2)
文殊菩薩(2)
表装(2)
迦楼羅(2)
獅子(2)
雀(2)
里山(2)
左義長(2)
紀貫之(2)
カントウタンポポ(2)
羽箒(2)
鶴・亀(2)
原種(2)
自生地(2)
蛙(2)
鳥文齋栄之(2)
邱北寒蘭(2)
釈迦 仏陀(2)
井上有一(2)
石仏(2)
カタツムリ 蝸牛(2)
前衛的「書」(2)
神様(1)
水源(1)
水着(1)
水墨画(1)
世齋(1)
清時代 仕女図(1)
西行法師(1)
静御前(1)
席画(即興の画)(1)
石渡いくよ(1)
折紙(1)
扇面(1)
素心(1)
鼠 ねずみ ネズミ(1)
双頭花(1)
相撲(1)
以前の記事
2023年 12月2023年 06月
2023年 04月
2023年 01月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 03月
2021年 11月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 04月
2020年 02月
2019年 11月
2019年 09月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 02月
2018年 12月
2018年 10月
2018年 08月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 03月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 01月
2013年 10月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
ブログジャンル
カテゴリ
東洋蘭にゃんこ
アート・コレクション
その他