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嵐山かな (芦雪)

花の嵐山 長澤芦雪 画/香川景樹 賛歌   13006 25x100

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山の所々に桜の花が咲く静かな嵐山の風景が描かれた、小品ながら叙情的で落ち着いた画です。

「歌界に新風を吹き込んだ」と言われる歌人の香川景樹(直木賞作家の志茂田景樹氏のペンネームの由来とか)による画賛の文から、嵐山は当時も観光名所だったので、シーズンには人々で賑わっていたことがうかがえます。

賛文を、七五調で多少文字の置き換えをすると、下記の様に読めるのでしょう。
残り咲く 花見し人は 散り果てる 夜静かなる 嵐山かな  景樹」

景樹は画賛から、芦雪の画を観て夜の(嵐山の)静けさを感じた、と言いたいのでしょうが、そのことで画が「夜景」だと決めてしまうのは早計の様な気がします。
画の墨色(松煙墨)と、賛の墨色(油煙墨)が全く違うので、景樹は、芦雪がこれを描いた時には同席しておらず、後日(施主から依頼されて?)画賛を入れた可能性が強いと考えられます(景樹がその名に改名したのが芦雪の没年の頃らしいことと、歌人としての名を高めたのが更に後らしいので、この画賛は芦雪の意図よりも、景樹の勝手な解釈で書き加えられた可能性が強いと思われます)。
人影は見えませんが、空も川も白く抜けていますので、芦雪は、まだ空の明るさの残る時間帯の光景を描いたのだと観るのが自然だと思います。薄墨が入らない桜の部分は淡く浮き立っていますが、観る者のイマジネーション次第で、明け方でも夕方にでも見えるのは、画の奥深さなのでしょう。

手前の渡月橋は、江戸時代元禄の頃から今と同じ位置だったのだそうですが、明治初期までは、狭くみすぼらしい、こんな木の橋だったのでしょう。(現在ではコンクリート製で大型車も通れる橋に変わっています)
橋との標高差が三百数十メートルある嵐山は、今と同じ位置なのでしょうが、松や桜は、何世代か前の物で、日本のさくら名所100選として選ばれる200年も前の姿なのでしょう。(現代の姿ともよく似た雰囲気を感じますが)

この画は、嵐山を北東側の少し高い場所から見下ろす様な視点で描かれていますが、この方角に山や丘は無いので、建物から描いたのだと思われます。

※その建物に関してネットで参考となりそうなページを見付けました。
それに依ると、この画の視点と思われる場所(右京区嵯峨天龍寺角倉町9付近)には、豪商だった角倉了以が1606年に邸宅を築き、その建物は江戸時代を通して子孫に維持されて来たのだそうです。2008年には、その遺構の保存品の中から芦雪の襖絵(「飲中八仙歌」の張旭の図)が新たに発見(翌年には京都市が文化財指定)されたのだそうです。(落款から「蘆雪晩年」:寛政後期頃の制作とのことです)


だとすると、芦雪が晩年、そこの襖絵の制作を依頼された時に、この『花の嵐山』も同じ場所で描いた(写生した)と考えるのが自然な推理かとも思われます。
豪商の邸宅で単独の制作活動と言うことは、既に応挙の没後(1796~1799年の春)だったのでしょうか。。

  ついでに、この画も「新発見」ということに・・・??
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by Ru_p | 2013-05-16 20:14 | アート・コレクション | Comments(0)


妄想猫の起末具連記


by Ru_p

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