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見たかった『白澤図』

中国の東望山に棲むと云われる霊獣『白澤』に関係する賛文と像の画(版?)ですが、
大昔に中国で作られた物だと思われます。
  07008  軸装画45x92 SCAN 画質;レベル調整済み
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原版(碑?木版?)に関しての詳細は不明で、これに似た文も画像も全くネット検索に引っ掛かりませんので、場合によっては残念ながら既に(戦争や文革などで?)残っていないのかも知れません。

この賛文の読めそうな字をなんとか拾ってみますと、下記の様に?
は不明、〈 〉は類似文字で置き換えて)

昔軒轅黄帝登東望山奇獣見形訽諸
大庭識者奏言此白澤也是上蒼太一
之精星妖物〈恠〉恙能辨之帝迺繪其像
几名山大川合鎮壓之萬悪消滅民人
無害僊絰云家有白澤圖可使鬼畏奴
主理常充足人養永安居有唐妙靖定
生張約賛日

黄帝大徳   博施於民   俯察地理
仰観天文   捕斬蚩尤   駈没鬼神
天下既静   物歸其根   有獣白澤
帝頭麟身  〈峩〉峩雙角  燦〃美鱗  (←帝の字には虎の意味もあるらしい)   
率退群魅   若 ■ 而䖝   太一化精
於変其真   惟〈状〉與名   識吝通東
巨嶽図形   普〈帰〉他人


黄帝(神話伝説上は、紀元前2510年~紀元前2448年、中国の「三皇五帝」時代の三皇の世を継ぎ、統治した五帝の最初の帝であったとされています)のいわゆる偉人伝の様な記述で、白澤に関する貴重な解説を幾つか含んでいます。

参考でウィキペディアでの『白澤』の解説からの引用をこの下に張ります。上の文と基本的な性格・位置づけは違っていないのですが、容姿に関しては、幾つか説があるらしく、必ずしも明確な説明は述べられていません。


白澤(はくたく)は、中国に伝わる人語を解し万物に精通するとされる聖獣である。
(中略)
麒麟(きりん)や鳳凰(ほうおう)と同じく、徳の高い為政者の治世に姿を現すとされる。
その姿については諸説あるが、牛のような体に人面、顎髭を蓄え、顔に3つ、胴体に6つの目、額に2本、胴体に4本の角を持つ姿で書き表されることが多い。そのほかにも、獅子や竜のような体のものや虎の顔のものなどがある。
聡明で森羅万象に通じ、古来から病魔よけとして信じられてきた。白澤に遭遇するとその家は子々孫々まで繁栄するといわれている。
(中略)
中国の伝説上の三皇五帝の一人である黄帝が、東方巡行した折に白澤に遭遇したとされる。
白澤は黄帝に11520種の妖異鬼神について語り、黄帝はこれを部下に書き取らせた。これを『白澤図』という。
ここでいう妖異鬼神とは人に災いをもたらす病魔や天災の象徴であり、白澤図にはそれらへの対処法も記述されており、単なる図録ではなく今でいうところの防災マニュアルのようなものである。
また、後世、白澤の絵は厄よけになると信仰され、日本でも江戸時代には道中のお守りとして身につけたり、病魔よけに枕元においたりした。



なのだそうで、聡明な「聖獣」であって「妖怪」とは云われてません。(妖しい「神獣」とでも言うべき?)


日本に在る白澤像の出典の殆どが、中国明時代の『三才図会』や江戸時代の『和漢三才図会』『今昔百鬼拾遺』かららしく、それ以前の資料は殆ど残ってないのではないかと思われます。
ところが、上の画(拓?)の隷書体はそれよりかなり古い時代の中国の文字と思われます(秦時代頃よく使われたらしい)。図様も人面では無く、目は9個も描かれておらず、体には麒麟や龍の様に輝くウロコが有るので、どうやら
日本で広く知られている白澤とは違うタイプの様に見えます(千年以上昔にその姿の伝承が、分かれたのならば、本来の姿を知るのは難しいでしょうが・・・)。この稀少な画(?)がなければ麒麟とも勘違いされそうですので、貴重な資料なのだと思われます。

〔頭や足先は虎かライオン風:猫科かな?
同じく架空の生き物である龍の姿の場合には「角は鹿・頭は駱駝・眼は鬼(幽霊)又は兎・胴体は蛇・腹は蜃・背の鱗は鯉・爪は鷹・掌は虎・耳は牛に似て、口辺には長髯・喉下には一尺四方の逆鱗・顎下には宝珠を持つ。
プロポーションは、首から腕の付け根まで・腕の付け根から腰まで・腰から尾までの長さが等比率」と言う中国南宋時代の爾雅翼と言う博物辞典からの情報が在ったので、古今の絵師等は挙って参考にして来ましたが〕



ちょっと紛らわしかったのですが、上で引用した解説文にも有った様に、本来の『白澤図』とは、白澤の姿を現した図の事ではなく、黄帝が白澤に教えられた情報を基に纏められた謂わば当時の「妖怪大百科事典」の事なのだそうです(その中には人知を超えて起こる天災や疫病などの災難も、妖異鬼神の仕業として扱われ、それらへの対処法も記されていたらしい)
。既に大昔にこの世から失われてしまった事になっているらしいのですが、妖怪の資料としては現在最も基本的と思われる「山海経(せんがいきょう)」も遥かに及ばない11520種もの妖異鬼神の情報だったので、本当に存在していたのであれば、とても残念なことで・・・・見たかった!







白澤の絵が厄よけになる」とは、ありがたい・・・










※2017/07/30追記
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(上の、掛け軸の画や賛に関して、新たな情報が見つかりましたので)


2017年1月20日に有限会社白沢社から発行された「復元白沢図(佐々木聡著)」を、昨日購入入手してみました。(タイトルや紹介文に興味があったので)
上の白沢の画と賛文(一繋がりの本紙として掛け軸に表装してあります)の画像と酷似した構図の図版が、この「復元白沢図」の中にもありました。


e0259194_19520208.jpg

     ( 「復元白沢図」P/107より 酷似の図版 ↓ )

e0259194_03014631.jpg

細部ディテールを見ると、掛け軸の図の方が原本の版に近いのかと思われます:賛文の175文字の内の何文字かは、似てはいますが字体が異なっています(写し損じもあるのかな?)




「復元白沢図」での説明に依ると、その図版は、屋代弘賢(1758~1841;江戸後期の国学者)著による『白沢考』に、中国明時代(1368~1644)の物と言われる原図から、搨墨(※)という複製方法で載録されていて、現代の「復元白沢図」での図版は、更にそこからの転載なのだそうです。

そして屋代弘賢の『白沢考』に載録された搨墨の基となった原図の方は、現在では所在不明なのだそうです。
(中国では明時代以降、日本ほど白澤信仰が普及しなかったので、白澤の図は、殆どが失われてしまって残っていないのだそうです)

その屋代弘賢の『白沢考』という本も、宮内省御陵部に所蔵、と言う事で、大変に希少な日本製の資料。
(古書検索で見つけられません/よくぞ残っていてくれました/現物を見てみたい・・)

さすがに専門家の学術的な研究は、徹底していて参考になります。


と言うことで、上にある掛け軸の図(拓本?版画?)がその所在不明だった貴重な「明時代」の「原図」と同じ内容(おそらく原版は同じ系統の出所)、と言うことになるのかも知れませんね。

『白沢考』からの酷似している図版と、掛け軸の図とを見比べた場合、白澤の像の部分は、軸の画の方に重ねて写し取り、それを版下としたかの様にも見えます。
文字の部分は書体も書法も明らかに異なるので、単に見比べて写し取り、版下として使っただけの様に思われます。
屋代弘賢の『白沢考』の現物を見ないと、正確には判断できませんが、図版の右上冒頭に書き加えられた「明搨墨本」は、おそらく白澤の像の部分のみの事でしょうが重ね写しが行われたので「搨墨」と言う表現を使ったのかも知れません。


発見!と言うこと? 
この掛け軸が、現存する最古の白澤図像と・・?

掛け軸(拓?版?)の方にある賛文の隷書体からは、その原版は明よりも古い時代に制作の可能性があります。
(おそらく、屋代弘賢の頃には「明時代」の物として、この掛け軸の画と同じか酷似の物が存在していて、それを見て写したので、『白沢考』に「明搨墨本」として載録・・・?)

「復元白沢図」によれば、中国での白澤の姿を文字で表した確実な資料は、明時代始めに記された『明集礼』で、元時代の旗に、「虎頭龍体」の例が見られるそうです。また、明時代の『大明会典』にも、「虎頭鱗身」の図はある様です。

白澤の図は、唐時代には既に世間に知られていた様です。そして、白澤に関連する記述も、六朝時代の書とされる「瑞応図」・「宋書」の符瑞志・「抱朴子」にもあるそうですが、それがその時代の編纂と言う確実な裏付けが、必ずしも十分ではないのだそうです。


こういう話は、知った時点で記録に留めておかないと、たとえ貴重な文化財でも、将来忘れ去られてゴミ扱いされてしまう可能性もあるので、追記しておきます。



(2017/09/16追記)
※搨墨 (⇒塡墨)
 (ウィキペディアより)

双鉤塡墨(そうこうてんぼく)は、中国で行われた書の複製を作る技術の一つ。
六朝時代から唐代にかけて広く行われたが、模刻の発達とともに衰退した。
(中略)
双鉤塡墨は紙に書かれた書蹟を複写する方法で、書の上に薄紙を置き、極細の筆で文字の輪郭を写しとり(籠字・籠写)、その中に裏から墨を塗って複製を作るものである。この方法による模写を「搨模」(とうも)と称する。書道では「文字の形」そのものが重視されるため、正確に模写するためには原本を書いた人間と同等の技術が求められる。その点、双鉤塡墨による搨模は特別な技術を要せず、輪郭をあらかじめ写し取るので、熟練すれば真筆と見まごう複製すら可能になる。


と言う方法の様です。
上の掛け軸の制作方法については疑問があったのですが、これも搨墨・・???

e0259194_10241162.jpg

(クリック拡大 :scan600dpi)

ちょっとマニアック過ぎるかも知れませんが、画像を拡大すると、文字部分は手描きの様にも見えます。
どうやら、既存の古い原盤(陰刻彫)の表面に墨を塗り、拓本を採ってみたが、原盤の風化などにより不鮮明だったので、白く抜けた内側(文字等の)部分にのみ、丁寧に白色系の絵の具(?)を塗り付け、鮮鋭に見せる様に工夫された物(搨墨;部分的な肉筆)だったのではないかと考えられます。

この掛け軸の画がその様に拓本を加工した物(搨墨)であれば、その元となった原盤の方は、明時代よりも更に古い物だったのではないかとも考えられますが、はたして何時頃誰によって何処でどの様に作られた物だったのでしょうか?

そして、この白澤伝説は何時から始まったのでしょうか、 と疑問は・・





















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by Ru_p | 2012-11-20 00:12 | アート・コレクション | Comments(5)
Commented by さんた at 2012-12-20 01:59 x
ありがとうございます。 前から見てみたかったものだったので思わずお礼を。存在すると思ってたんですけど、本当にあったんですね。眼福です。
Commented by Ru_p at 2012-12-20 04:47
さんたさん
コメントありがとうございます。
喜んでいただけると、こちらもうれしいです。
Commented by puh at 2014-12-25 19:34 x
11520種もあればいろいろ載ってたでしょうね。
終りの方にルとか、村、迷とか、、、
Commented by Ru_p at 2014-12-26 13:56
puh さん
おそらく、神話伝説上?の数千年前に『白澤図』が既に失われた、と言う漢時代に編さんされた話が元になり、それが広く世に伝わったのでしょう。
残念ながら、黄帝が存在した根拠もはっきりしない様ですから、その数字も含めて信憑性は極めて乏しいです。
その時代には、天変地異や疫病など人知の及ばない災難の原因を全て『妖異鬼神』のせいにしていたと考えられますので・・・でも、もしも実際に存在したのであれば非常に興味深い物です。それ程多種の図が描き分けられていたのだとしたら、恐るべき創作能力ですね。
Commented by Ru_p at 2014-12-26 17:29
>終りの方にルとか

白澤図の復刻版を誰かが作るとすれば、既に原本も複写も内容を具体的に示す資料が全く無いのですから、どんな復刻版であったとしても、誰も指摘出来ない事になるのでしょうね。是非ともお作り下さい。


妄想猫の起末具連記


by Ru_p

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