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写された牛図(芦雪)

                長沢芦雪 筆 牛と牧童の図(①)  07024 55x135

e0259194_18121035.jpg牛の胴が画面からはみ出す構図と、接近して斜め上から見下ろす描写で、牧童がズリ落ちそうにも見える視覚効果は、いかにも芦雪らしい奇抜な構図構成です。

少々マニアックなテーマで、何年か前に別のブログでも書きましたが、芦雪の右の画と芦雪の没後20年も経ってから生まれた上田耕冲と言う絵師の代表作「桃花牧童図(逸翁コレクション)」とは細部まで酷似しています。
日本画』の世界では近年まで先人の画を写すことに「著作権侵害」などと言う意識が全く持たれませんでしたので、特に不思議な事ではないのですが、ここでの繋がりはある意味で興味深い「発見」ではないかと思います。耕冲は他にもこれと似た(左右反転の)構図で、更にアニメチックな「牧童図(クラークコレクション)」も描いていて比較すると面白いです。


江戸時代の牛は全て「和牛」で西洋種の影響を全く受けていなかったと思われますが、今では絶海の孤島に僅かに2系統しか純血種は残っていません。芦雪の牛には画の中でしか会えなくなってしまったようです。




 人なつっこくて実にかわいい牛の顔。見ていて飽きません。
e0259194_18144816.jpg

 
      芦雪の「動物の目」の中でも、これは特に好き。
e0259194_716991.jpg




      参考で比較用の画像を下に並べてみます。
e0259194_18201586.jpg

①長沢芦雪筆「牛と牧童の図」
②上田耕冲筆「桃花牧童図」 逸翁コレクションより
③上田耕冲筆「牧童図」 クラークコレクションより
      (③は比較のため左右を反転して鏡像で表示しました)
【①②の主な相違点比較】
作者       ①長澤蘆雪(1754~1799)  ②上田耕冲(1819~1911) 
基底材      紙本(唐紙:竹、の様です)     絹本
添景        特には無し              花びら(桃? 桜?)
落款印章      朱文氷形印「魚」(欠有)     署名「耕冲」と印
大きさ       約55x135(cm)          約55x135(cm)

①の作画時期は印章の欠けにより、1792年~1799年の間 (nagasawa rosetu)
②③の作画時期の詳細は不明ですが、幕末~明治の頃 (ueda kouchu)


小さな写真ですが画像を重ねてみると、①②は牧童や牛の目など多くの部分が一致して見えますので、②を①に重ねて写したと考えられます。③は似てますが全く重ならないようです。
耕冲にとって芦雪は、円山派の大先輩に当たるので、この画を見たり写す機会もあった事なのでしょう(耕冲の父の上田耕夫も応挙の門下)。芦雪の牛には筆を重ねる順序に「写生」による描写の新鮮さが幾らか残っている様ですが、②③の耕冲の画の方には、予め構図を把握して描けたことにより、花弁の演出などで、アニメチックに昇華させることが可能だった余裕を強く感じます(牛自体も西洋種の混じった様な顔に見え・・・・)。

伝統的な日本画(広義の意味で)の練習法の一つに先人の絵の模写があります。基底材の絹や紙は半透明なので、下敷きにすれば元画が透けて全く同じ構図が容易に写し取れます。江戸時代の絵師の多くは画を描く職人であって、必ずしも創造の独創性を期待されるアーティストばかりではなかったのでこの様な「写し」が出来たのでしょう。構図が共通でも、それぞれの作品には作者毎の筆遣いの味わいがあり、違った意味での価値や楽しさを評価されて来たからなのでしょう。


 


          残念ながら「牧童」は子供ではなくオヤジ顔・・・
e0259194_84545.jpg








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by Ru_p | 2012-06-07 09:37 | アート・コレクション | Comments(0)


妄想猫の起末具連記


by Ru_p

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